食事は、単に「美味しい」ことだけが満足度のすべてではありません。
金額的なこともあるでしょうし、場所の空間的な要素やサービスの良し悪しも然りです。今日は食事に使用する食器について考えてみます。
この3月10日まで、小松市立本陣記念美術館では「食の工芸を楽しむ」という企画展が模様されていました。私も見に行きました。
九谷焼はもちろんのこと、他の伝統工芸品など色々な食器が展示されていて面白かったです。
さて、石川県は日本有数の伝統工芸品の産地です。
人口当たりの人間国宝の数も京都と並んで多く、そのこともあって、2020年には日本海側で唯一の国立の美術館として、東京国立近代美術館工芸館が金沢に移転。新しく「国立工芸館」という通称で開館する予定です。
食事に使用されるものだけを取ってみても「輪島塗」や「山中漆器」「金沢漆器」、陶磁器では「九谷焼」「大樋焼」「珠洲焼」などがあります。
そんな中、今回は九谷焼にスポットを当てて個人的な独り言を書きます。少々お付き合いください。
九谷焼は江戸時代前期の古九谷から始まり、一旦途絶えたものの、その後復興され、いまでは日本でも有数の陶磁器の産地となって、世界にも多くのファンがいます。
九谷五彩と呼ばれる色絵に大きな特徴があって、花鳥風月を大胆な絵図柄で表現しているものも多くあります。
これは江戸初期に作られた古九谷の絵皿です。古九谷の時代から色鮮やかな彩色がされていたことがわかります。
しかし一方、こちらの九谷は山本長左さんのもので、呉須という顔料を使用した染付けのみで書かれています。
あと、赤絵のみの九谷もあったりと多彩です。
しかしながら伝統工芸品の市場は年々縮小しており、その限られたパイを全国各地の伝統工芸品が奪い合うわけですが、黙っていては衰退の一途でしょう?
石川県の伝統工芸品の一つである九谷焼の世界でも、色々な試みをしながら頑張っています。
例えばこちらの九谷和グラスは、その九谷焼と江戸硝子を融合させて作られています。脚の部分は九谷焼、ガラス部分は手作りの吹き硝子で出来ていて、和洋どちらの飲み物・食べ物にも合うデザインで、いま人気となっています。
ご覧のように、九谷の脚のデザインとガラスの種類・形で何通りの組み合わせも可能で、自分だけのオリジナルなものを作ってコレクションされる方もいます。
能美市にある清峰堂というところが製造元です。
清峰堂
石川県能美市新保町ヲ48
0761-57-2133
私が時々食べに行く金沢の鮨店「志の助」でも使用されています。
磁器とガラスという異素材を接合させる技術によって、2006年度グッドデザイン賞(新領域デザイン部門)を受賞しています。
いまは色々な作家さんがデザインをしていて、楽しませてくれるようになってきている注目株の九谷焼なのです。
話は変わりますが、石川県で作られている九谷焼。その土台となる陶石はどこで産出されたものが使われているかご存じでしょうか?
小松市なのです。
ちなみに小松市では「『珠玉と歩む物語』小松~時の流れの中で磨き上げた石の文化~」ということで平成28年度の「日本遺産(Japan Heritage)」に認定されています。
私のブログではこちらで紹介しています。
こちらは、その一つ、山あいにある滝ヶ原町の昔の採石場である「西山石切り場跡」。
そんな石の産地である小松市だからこそ、九谷焼にとってもいい陶石が産出される土地なのです。
江戸時代後期に小松市花坂地区で発見された九谷焼の原料となる陶石。
学術的には流紋岩という種類のようですが、小松市にある小松市立博物館に行くと、小松の石文化に関する展示を見ることが出来ます。
しかし、いくらいい陶石が出ても、そのままの状態では焼き物には使えません。陶石粉砕から九谷焼陶土にするまで様々な工程が必要です。
そのような加工をする工場が小松市にはあります。
現在、東京オリンピックの競技場の設計で知られる隈研吾氏が基本設計をしている九谷焼創作工房「九谷セラミック・ラボラトリー CERABO KUTANI」。
その工程の技術を高めると同時に、製造工程の近代化を目的として作られている施設がほぼ完成しています。
こちらの写真は今日現在のもの。外観はほぼ完成です。中にはまだ入ることが出来ないのでわかりませんが、今年度工事なので3月末までには外部の舗装など含めて終わりだと思います。
こちらの写真は今日現在のもの。外観はほぼ完成です。中にはまだ入ることが出来ないのでわかりませんが、今年度工事なので3月末までには外部の舗装など含めて終わりだと思います。