2023年5月5日午後2時42分に奥能登珠洲で発生した震度6強の地震。
被災された方々とそのご家族の皆様に改めてお見舞い申し上げます。
さて、そんな珠洲市に行ってきました。地震のほうは現在はだいぶ落ち着いているようで、我々がいる間は一度も揺れませんでした。
目的は9月23日から始まった「奥能登国際芸術祭2023」を見るため。
今年が3回目の開催で、14の国と地域から59組が参加。第1回目からの常設しているものを含め、あわせて60点の作品が展示されています。
私は今回初めて見に行きました。
1泊2日の短時間の滞在だったので、すべてを見ることはできませんでしたが、2日間ともいい天気に恵まれ、なかなかの見ごたえがある作品が多くて満足度高かったです。
小松から珠洲まではさすがに遠いです。小松からは車で2時間20分ほどかかりました。
作品は日置、三崎、蛸島、飯田、上戸、宝立、大谷、正院、直、若山と大きく分けて10のエリアに展開されていますが、今日は、そんな作品の中で見てきた主なものを紹介していきます。
基本的には屋外展示は無料、屋内展示は有料で、多くを見たい方はパスポートを購入するのがおすすめ。屋内展示は1作品330円です。
各エリアが離れているので、個人で行くには車が必須で、カーナビの恩恵がないとたどり着けないですね。あと、ガイドブックを買っていったのですが、展示作品の紹介に住所が記載されていないので少し大変でした。(沿道には看板が立っていて、近くまでいくとわかる配慮はありがたかったです)
ちなみに、過去2回の芸術祭の作品で現存しているものについても、あわせてみることが出来ます。
まず最初に向かったのは、廃線になったのと鉄道能登線の旧鵜飼駅のホームに設置されているオーストラリア/香港のコウ・シュンミン(高浚明)さんの「秘境」という作品。
ガイドブックに掲載されていた完成イラストではR形状だったのですが、実際のものは少し違っていました。
こちらは珠洲のシンボルである見附島の近くにあるシリン・アベディニラッドさんの作品で「流転」。
海岸に落ちていたシーグラスや魚網などを用いてのインスタレーション。展示場所は漁具倉庫だったところで、真っ暗な中に淡い光によって照らされていました。砂が引き詰められた床に映し出されるガラスの影など幻想的な雰囲気を醸し出していた作品でした。
こちらは、その近くの柳田児童公園にある、インドのN.S.ハーシャさんの作品で「なぜここにいるのだろう」と名付けられた作品。「迷子のキリン」の親子だそうです。
こちらは、一つポツンと離れたエリアに作られた、コレクティブさんの「SIDE CORE《Blowin' In The Wind》」という作品。
珠洲には風力発電のための風力タービンが多くあって。その近くに風見鶏を設置してありました。同じ、風を使って動くもので文明の歴史を感じさせてくれる作品でした。
上戸エリアにある現在だれも住んでいない民家を会場に、海洋生物や魚の木彫作品が置かれたり吊り下げらている作品を展示してある、吉野央子さんによる「回遊の果て」という作品。
音響や、ちょっとした仕掛けを体感でき、思わずクスッと笑うようなところもあり、座敷には、この家の主?の大蛸が鎮座していました。
こちらはドイツのトビアス・レーベルガー氏の「Something Else is Possible / なにか他にできる」という作品。
廃線となった、のと鉄道能登線の線路上に作られたカラフルな色を使った造形です。
2017年の第1回目の芸術祭のときに作られ、現在まで常設展示されているもので、無料で見ることが出来ます。
鉢ケ崎オートキャンプ場のところにある台湾の4名のアーチストユニット「ラグジュアリー・ロジコ(豪華朗機工)Luxury Logico」の「Home Whispering」という作品。「瓦を通して、『記憶』『家』『人口』『産業』など、素材と地域問題の関連性をとりあげ、家というものを記憶を集めるエネルギーの象徴と考え、「集まることは力になる」をコンセ プト」に作られているそうです。
こちらは旧保育所を会場に作られた山本基さんの「記憶への回廊」。
彼は妻と娘を亡くされているそうで、長年「塩」を用いたインスタレーションを制作しています。この作品も2か所が欠落した塩の階段が天井へ向かって伸びていて、彼曰く「思い出を封じ込める壮大な試み」とのこと。青と白のドローイングのイメージを含め考えさせられる作品でした。
こちらはドイツのカールステン・ニコライさんの「Autonomo」。
旧保育所の大きな遊戯室の中に天井から吊られた9枚のアルミの円盤。これにテニスボールが当たると音が発生するというものでした。
かつてここで遊んでいた園児たちの声を思い起こさせせてくれます。
2日目は外浦方面を巡りました。
これはアゼルバイジャン出身のファイグ・アフメッドさんの「自身への扉」。
ゴジラ岩を眺める海岸に神社の鳥居が設置されていて、そこをスパンコールで覆っている作品。
ちょうど干潮のときで、護岸のところから下に降りて作品を見ることが出来ました。
こちらは、スペインの作家アナ・ラウラ・アラエズ作「太古の響き」という作品。
こちらは金沢市出身の奥村浩之さんの「風と波|Wind and Waves」という作品。彼は現在メキシコを中心に活躍しているそうです。
景色のいい場所に真っ白な石でできた作品で、外浦の荒々しい海の波がしらをイメージしているのかな?
「割戻し」という技法を用いて作られていますが、切り立った白い石と青空、そして青い海とのコントラストがすばらしい!
こちらはロシアの故アレクサンドル・コンスタンチーノフさんの「珠洲海道五十三次」。この作品が遺作となりました。
珠洲市内にあるバス停4か所に、貝殻が真珠を包むように格子状の構造物でバス停を包み込んだ作品でした。
こちらは浅葉克己さんの「石の卓球台3号」。
前回は、飯田町の海沿いにある「さいはてのキャバレー」に置かれていた作品ですが、地震のため、この場所に移されたようです。
奥の方にある建物は「スズ・シアター・ミュージアム」。
前は珠洲市立西部小学校の体育館だったところを、珠洲市の文化の保存のため2021年に改修され歴史民俗博物館となっています。
中は「光の方舟」という展示で、ここだけは料金が800円となっていました。
むかし家庭で使用されてきた生活用具を展示。そして民謡、祭囃子が映像や光、音などによるインスタレーションが繰り広げられます。
最後は、冒頭アップしたガイドブックと、雑誌ブルータスの表紙を飾っている塩田千春さんの「時を運ぶ船」。
第1回からの継続しての展示となっていて、むかし揚浜式製塩で砂取舟として使われていた実際の小舟を、千個の赤い毛糸を使って、空間に張り巡らされる人々の記憶や歴史を表現しています。
最初想像していたより見ごたえがあって面白かったです。
他にも色々楽しくて見る価値がある作品が多数あります。皆さんも是非行って見てください。
奥能登国際芸術祭2023
石川県珠洲市各地で開催
会期:2023年9月23日~11月12日