昨年に、北陸新幹線が金沢まで延伸したことで、石川県と長野県はずいぶんと近くなった気がします。
昔は、車でも電車でも4~5時間はかかったところ、いまでは新幹線で1時間5分という短さです。
しかしながら、私も長野県については、プライベートでは実に久しく行っていなかったり、知識的にもほとんど知らないということに気づきした。^^;
今日紹介します、東京は湯島。そう!湯島天神で有名なところですが、その地下鉄の駅の出入口隣にあります「おざんざ」のお店「湯島 春近」に行ってきました。
「おざんざ」とは信州うどんのことで、山梨県の「ほうとう」に近いようです。
実は、「湯島 春近」は、私もよく存じ上げていて、小松にも昔、公私ともに何度も来ていただいたことがある荒井久さんのお店なのです。そうそう!だいぶ前のことですが私の披露宴にもわざわざ東京から遠路はるばる出席していただきました。
お店がオープンしたのは今年の2月。荒井さんは長野県佐久市出身。「湯島 春近」をオープンさせる前も、長野県産の野菜などの野菜をオンラインショップで販売したり、その野菜を使ったベジタブルダイニングのお店をやっていたりしていました。そしてこのたび、生まれ故郷である長野に関係するビジネス経験をいかして、今回の「湯島 春近」というお店のオープンに至ったということです。
ちなみに、お店の名前は、荒井さんの亡くなられたお兄さんのお名前だそうで、6人兄弟の5番目だった荒井さんは、小さいころお兄さんが作ってくれた「おざんざ」の味を忘れられずに、このお店をオープンさせたのです。
お店のシェフは、荒井さんの奥さまの俊恵さん。生まれが静岡県伊東市。実家が鮨屋を営んでいたということで、小さいころから料理に興味を持っていたということでした。某有名ホテルに勤務のあと、別の会社勤めを経験し、荒井さんと結婚後は、前述のベジタブルダイニングのお店での経験が、料理人としての本能を目覚めさせました。
そして、ヨーロッパでのイタリア料理研修などを積み重ね、いまの「おざんざ」のお店「湯島 春近」の味のベースを作っています。
さて、いわゆる郷土料理である「おざんざ」は、基本はうどんですが、今の時代、美味しいうどん屋さんは東京にもたくさんあります。いくら料理の素質があってもなかなか勝負するのは苦しいと思うのですが、俊恵さんはヨーロッパでのイタリア料理研修で培った経験と、鮨屋が実家という彼女の生まれ持った料理のセンスをいかして、後述するような創作系の「おざんざ」をメニューに加えるなどの工夫をしています。そしていまではお品書きには和洋色々な「おざんざ」が並ぶようになっています。
また素材や水にもこだわっていて、化学調味料を使わず、できる限り天然素材・無添加。全国各地から美味しくなる調味料を取り寄せおり、うどんの命ともいえる出汁は、羅臼昆布と伊吹産イリコ大羽を前日から水出しし、鰹節・宗田節・鯖節の厚削りを加えて白出汁を作っているのです。また、使っている水は「πウオーター」です。
讃岐うどんで有名になったイリコを使っているうどん店は最近は増えていますが、特に冷たい出汁のときにエグミのない美味しいのを作るのが難しいのです。
シェフが奥さまで、ご主人の久さんはサービス担当。店舗面積は8坪でカウンターのみ12席の狭い店内。ご主人の久さんは、少しお邪魔なようです。(笑い)
そしてこの日は、もう一人懐かしい人との再会がありました。墨絵アーチストの岡林里依さんです。
彼女とも、むかし、東京や小松で色々ご一緒させていただいた仲で、今回、約11年ぶりの再会となりました。高知出身の里依さんは女性ながら豪快そのもの?^^; 思ったことをずばりと話されます。その性格は作品である墨絵にも表れていて、墨の濃淡を躍動感に描いた彼女の墨絵は、著名建築のインテリアの一部として重要な要素となっていたり人気のアーチストなのです。
私がお店に伺ったのは、夜の8時少し前。ちょうど入れ違いに外国人のご家族がお店から出てきました。海外からのお客さんも多いということです。
「うどん」という日本文化から生まれた料理の認知度も上がってきているのですね。鮨や天ぷら、すき焼きなど、これまでの日本食におけるステレオ的な、通り一辺倒の食べ物だけではなく、色々正確な認識が世界で広まるのはいいことです。
この日、一軒目は別なお店で軽く飲んできた私は、岡林里依さんが到着するまでの間、日本酒と軽めのおつまみを出してもらいながら、荒井さんと積もる話をして待ちます。
飲んだのは、こちらの信州のお酒「千曲錦」の辛口特別純米酒。アルコール度数も高くなく、さらりとした飲み口で美味しかったです。限定酒だそうです。
酒の肴には冷たい揚げ出しナスを出していただきました。
ほどなく岡林里依さんが到着して、これまた懐かしい話をたくさんしながら、美味しい料理に舌鼓をうちます。
こちらは北海道の柳ダコの卵だそうです。タコの卵というのは初めて食べました。卵そのものに味があるわけではなく、穴子の稚魚のノレソレのようにツルッとした食感、ポン酢醤油でのど越しを楽しむものです。
ワカサギ天です。長野のわかさぎの旬は冬なのでしょうが、これは茨城産だそうです。茨城産のワカサギは「夏ワカ」と呼んでいて、7月21日解禁。行った時がちょうど解禁直後だったので旬の味を楽しむことが出来ました。ちなみに茨城産のワカサギは7月から12月まで出荷が続きますが、7月、8月の夏ワカが柔らかくて天ぷらに最適とされています。酒のつまみに最高でした。
胡麻豆腐です。濃厚な胡麻の味です。
こちらは、里依さんが頼んだ「牛肉とナスの生姜焼き」だったかな?私は食べていません。
この酒は里依さんが頼んだ、私と同じ千曲錦の純米大吟醸の原酒です。
あと、宮崎県の王手門酒造の芋焼酎で「牢(ろう)」なんて、面白い酒も置いてありました。牢屋をイメージしてラベルは畳表?ムシロ?という代物でした。こちらは飲んでいません。
そして最後は締めは、もちろん「おざんざ」です。今回、「湯島 春近」で食べたいおざんざは実は決まっていました。「ツナニラペペロンチーノ」と「豚野菜チーズカレー」です。
この2品は、グルメ通で有名なアンジャッシュの渡部さんが、こちらのお店に来て食べていたからです。彼は大変この2品を気にいってくれたそうです。
と聞けば食べないわけにはいかないでしょう!?
こちらが「ツナニラペペロンチーノ」です。具材はメインのニラとツナ、ナス、しめじ。まさにパスタ感覚で食べられる「おざんざ」です。
「おざんざ」に使われている麺は、「ほうとう」に使われる太麺を2mm幅に切り出した細麺を使っていますが、この麺が何とも言えない食感でした。うどんとは少し違った弾力というか食感で、グニャとした感じなのですが、コシもあって不思議な感じでした。
ペペロンチーノの味の決め手であるオリーブオイルには、エキストラバージンオリーブオイルを使っているそうです。濃厚な味でしたが、後味すっきり、具だくさんのおいしい「ほうとう」でした。
まさに「和」と、奥さまの得意分野である「イタリアン」の融合ですね。
「豚野菜チーズカレー」はこちらです。「ツナニラペペロンチーノ」も美味しかったですが、個人的にはこちらのほうが好みの味です。ヒットでした。
先ほどの「ツナニラペペロンチーノ」の2mm幅の細麺より、1mm太い3mmのを使っています。この2が3になるだけで、食感や食べた時の味などがこれほど違うのですね。
モチッとした食感の麺になっていて、チーズカレーという濃厚な味にも負けない麺になっていました。
うどん屋さんで食べるカレーは、出汁がきいたサラッとしたのが多いのですが、チーズカレーということで、この味を出すことに苦心したと話されていました。ちなみに、カレーのスパイスの調合はご主人の久さん担当だそうです。
本当は、昔からある「おざんざ」の食べてみたかったのですが、この日はこれでお腹が一杯になりました。これは次回の宿題ということで。
さて、本当に久しぶりにお会いしたお二人。昔のままのお元気な姿を拝見して、10数年前に色々ご一緒させていただいたころのことが走馬灯のように記憶がよみがえってきました。
この日は「おざんざ」という新しいうどんの味にも出会えました。そして、なつかしく、そして束の間でしたが楽しいひと時を過ごすことが出来ました。ありがとうございます。そしてご馳走様です。
湯島 春近
東京都文京区湯島3-47-10
TEL 03-5842-1134
11:30~15:00
17:30~22:00
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